「おじいちゃんやおばあちゃんが、いつもと違って最近なんだか怒りっぽくなっちゃった…」そんな経験はありませんか? もしかしたら、それは認知症のせいかもしれません。
認知症になると、今まで優しかった人が急に怒りっぽくなったり、周りの人にきつく当たってしまうことがあります。
認知症って、ただ物忘れがひどくなるだけじゃないの?」 そう思う人もいるかもしれませんね。
でも、認知症は脳の病気なので、記憶だけでなく、感情や行動にも影響が出ることがあるんです。
今回は、認知症で怒りっぽくなる理由や、いつまで続くのか、そして周りの人がどう接すれば良いのかを、お医者さんの話も交えながら、分かりやすく解説していきます。
1. 認知症で怒りっぽくなる理由を専門医が徹底解説!脳との関係とは?
私たちの体は、脳が司令塔のような役割をしています。歩く、話す、考える…全部脳が指示を出しているんです。認知症になると、この司令塔がうまく働かなくなってしまいます。 それはまるで、スマホのボタンが効かなくなったり、勝手に画面が変わってしまうようなものです。そうなると、イライラして怒りっぽくなってしまうのも当然ですよね。 体にたとえると、今まで当たり前にできていたことができなくなると、「どうしてできないんだ!」とイライラしたり、不安になったりしますよね。その気持ちが、怒りとなって表に出てきてしまうことがあるんです。
認知症には、いくつかの種類があります。それぞれの種類によって、怒りっぽくなる原因や症状が少しずつ違うので、順番に見ていきましょう。
1-1. アルツハイマー型認知症が原因となる怒りっぽさの特徴と症状
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多いタイプです。脳の中に「ゴミ」が溜まってしまう病気で、このゴミが脳の働きを悪くしてしまい、記憶力や判断力が低下します。 初期の頃は、物を置いた場所を忘れたり、同じことを何度も聞いたりすることが多くなります。そして、だんだんと時間や場所が分からなくなったり、人の名前を思い出せなくなったりします。 アルツハイマー型認知症で怒りっぽくなる場合は、
- 自分の言いたいことがうまく伝えられない
- 周りの人が何を言っているのか理解できない
- 昔の嫌な記憶が蘇ってきて不安になる
といったことが原因として考えられます。
例えば、
• 「あれ、財布がない!誰かが盗んだに違いない!」と、周りの人を疑って怒る
• 「ここはどこだ?早く家に帰りたい!」と、不安になって怒る
といった様子が見られることがあります。
1-2. レビー小体型認知症が引き起こす怒りや感情変化のしくみ
レビー小体型認知症は、脳の中に「レビー小体」という特殊な物質ができる病気で、このレビー小体が、脳の様々な場所に影響を与えるため、症状も人によって大きく異なります。 レビー小体型認知症の特徴的な症状として、幻覚を見たり、動作がゆっくりになったり、感情の起伏が激しくなります。
例えば、
• 「部屋の中に虫がたくさんいる!」
• 「知らない人が家にいる!」
といった幻視を見て、怖がったり、興奮したり、怒ったりすることがあります。まるで、ジェットコースターに乗っているみたいに、感情が大きく揺れ動くのです。
また、レビー小体型認知症では、自律神経という体の機能をコントロールする神経にも影響が出ることがあります。そのため、血圧が急に変動したり、便秘になったり、汗をかきやすくなったりといった症状が現れることもあります。これらの体の不調が、イライラの原因になることもあります。
1-3. 前頭側頭型認知症に伴う攻撃的な言動の具体的な内容とは?
前頭側頭型認知症は、脳の前の方と横の方にある「前頭葉」と「側頭葉」という部分が萎縮(小さくなること)することで起こります。 前頭葉は、人の性格や行動をコントロールする役割を担っています。そのため、前頭側頭型認知症になると、
- 今まで我慢できていたことが我慢できなくなる
- 周りの人の気持ちを考えずに、思ったことをすぐに口に出してしまう
- 同じ行動を繰り返してしまう といった症状が現れることがあります。
例えば、
• お店で気に入ったお菓子があると、我慢できずにすぐに食べてしまう
• 周りの人が困っているのに、平気で自分のしたいことをしてしまう
• 気に入らないことがあると、すぐに怒ったり、暴力を振るったりする
といった様子が見られることがあります。
2. 認知症による怒りや暴言はいつまで続く?進行との関連を専門家が解説
「認知症で怒りっぽくなったら、ずっとこのままなの?」 と心配になる人もいるかもしれませんね。認知症の症状は、風邪のようにすぐに治るものではありません。ゆっくりと時間をかけて進行していきます。 認知症の怒りっぽさは、認知症の進行度合いや、周りの環境、その人の性格など、様々な要因によって変化します。
2-1. 認知症の進行度合い別に見る怒りの症状の変化とその期間
認知症の初期段階では、自分の記憶力の低下や、できなくなることが増えていくことに気づき、不安や焦りから怒りっぽくなることがあります。 中期になると、時間や場所が分からなくなったり、人の区別がつかなくなったりすることが増え、混乱や不安から怒りっぽくなることがあります。 末期になると、ほとんど寝たきりになり、言葉を発することも難しくなるため、怒りの感情を表に出すことが少なくなる傾向があります。 ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、認知症の種類や、その人の性格、周りの環境によって大きく異なります。
2-2. 怒りや暴言が特に強く現れる時期や状況に注意すべきポイント
認知症の人が怒りや暴言を強く現す時期や状況には、いくつかのパターンがあります。
- 夕暮れ時:夕暮れになると、周りが暗くなり、時間や場所の感覚が曖昧になるため、不安や混乱から怒りっぽくなることがあります。(これを「夕暮れ症候群」と呼びます。)
- 環境の変化:引越しや入院など、環境が大きく変わると、不安や混乱から怒りっぽくなることがあります。
- 体調不良:風邪をひいたり、便秘になったりすると、体調が悪くなり、イライラして怒りっぽくなることがあります。
- コミュニケーション不足:自分の気持ちをうまく伝えられなかったり、周りの人の言葉を理解できなかったりすると、イライラして怒りっぽくなることがあります。
これらの時期や状況では、特に注意して、認知症の人の気持ちに寄り添うように心がけましょう。
2-3. 怒りっぽい症状が落ち着くことはある?症状緩和につながる条件とは
認知症の怒りっぽい症状は、完全に消えることは難しいかもしれませんが、症状を緩和することは可能です。 症状緩和につながる条件としては、
- 適切な薬物療法:認知症の症状を緩和する薬や、精神安定剤などを使用することで、怒りっぽい症状を抑えることができます。
- 非薬物療法:音楽療法や回想法、運動療法など、薬を使わない治療法も効果があります。
- 安心できる環境:認知症の人が安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
- 周りの人の理解と協力:家族や介護者が認知症について理解し、寄り添う姿勢を持つことが大切です。
3. 認知症患者が怒りを感じる日常生活での具体的な原因と環境の影響
認知症の人が怒りを感じる原因は、日常生活の中にたくさん隠されています。
3-1. 家族や介護者が気づきにくいストレスや負担が怒りの原因に?
認知症の人は、自分の気持ちをうまく言葉で伝えられないことがあります。そのため、周りの人が気づかないうちに、ストレスや負担を抱えていることがあります。
例えば、
• トイレに行きたいのに、なかなか言い出せない、場所がわからない
• 服を着替えたいのに、うまく着替えられない
• テレビを見たいのに、リモコンの使い方が分からない
といった小さなことが、ストレスとなり、怒りの原因となることがあります。
3-2. コミュニケーション不足が認知症患者の怒りを増幅させる可能性
認知症の人は、周りの人の言葉を理解したり、自分の気持ちを伝えたりすることが難しくなることがあります。
そのため、
- 「何を言っているのか分からない」
- 「自分の気持ちを分かってもらえない」
と感じると、孤独感や不安感が増し、怒りっぽくなることがあります。
コミュニケーション不足を解消するためには、
- ゆっくりと、分かりやすい言葉で話しかける
- 相手の目を見て、優しく話しかける
- 相手の気持ちを理解しようと努める
- 言葉だけでなく、表情や態度で愛情を伝える
といったことが大切です。
4. 認知症で怒りっぽくなった家族への正しい接し方と対処法のポイント
認知症の家族が怒りっぽくなると、 「どう接すれば良いのか分からない…」 「私もイライラしてしまう…」 と悩んでしまう人もいるかもしれません。
4-1. 患者の怒りに巻き込まれない適切な距離感と落ち着いた対応方法
認知症の人が怒り出した時は、まず自分自身が冷静さを保つって優しく声をかけましょう。「どうしたの?」「何か困っていることある?」と聞いて、相手の気持ちを理解しようとすることが大切です。
- 相手の言葉を真に受け止めない
- 感情的に言い返さない
- 落ち着いた声で、優しく話しかける
- 相手の気持ちを理解しようと努める
そして、相手との間に適切な距離感を保つことも大切です。
- 近づきすぎず、離れすぎず、適度な距離を保つ
- 相手のパーソナルスペースを尊重する
- 相手のペースに合わせて行動する
4-2. 怒りや暴言から暴力に発展しないための具体的な予防対策
危険な物を近くに置かない、大声を出したり急に近づいたりしないなど、暴力に発展しないように注意しましょう。 怒りや暴言がエスカレートして、暴力に発展するのを防ぐためには、
- 早期発見・早期対応:怒りっぽい症状に気づいたら、早めに専門医に相談する
- 原因の特定:怒りの原因を特定し、取り除く
- 環境調整:認知症の人が安心して過ごせる環境を整える
- 気分転換:散歩や音楽鑑賞など、気分転換になるようなアクティビティを取り入れる
- 緊急時の対応:万が一、暴力に発展した場合の対応策を事前に決めておく
4-3. 怒りっぽい症状に悩む家族が利用できる支援サービスの紹介
認知症の家族の介護は、心身ともに大きな負担がかかります。一人で抱え込まず、積極的に支援サービスを利用しましょう。
- 地域包括支援センター:地域の高齢者に関する相談窓口です。介護保険サービスや、地域の支援サービスを紹介してくれます。
- 認知症カフェ:認知症の人やその家族が、気軽に集まってお茶を飲んだり、情報交換をしたりできる場所です。
- 訪問看護ステーション:看護師などが自宅や施設に訪問し、療養生活をサポートしてくれる事業所です。
- 介護サービス:訪問介護、デイサービス、ショートステイなど、様々な介護サービスがあります。
- 家族会:認知症の家族を持つ人たちが集まって、情報交換をしたり悩みを共有したりする会です。
5. 家族や介護者が知るべき重要ポイントのまとめ
認知症の人は、わざと怒っているわけではありません。脳の病気のせいで、うまく気持ちをコントロールできないのです。周りの人が優しく接し、理解しようとすることが大切です。 怒りっぽい症状とうまく付き合っていくためには、
- 認知症について正しく理解する
- 認知症の人の気持ちに寄り添う
- 適切な距離感を保つ
- 周りの人に助けを求める
- 自分自身を大切にする
ということが大切です。
認知症の家族の介護は、大変なことも多いですが、愛情と理解を持って接することで、穏やかな日々を送ることができます。 困った時は、一人で悩まず、専門家や支援サービスに相談してください。このブログが、少しでもお役に立てれば幸いです。
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